はやぶさ 再突入時の誘導精度について

都内某大学の学園祭に、はやぶさの実際の軌道制御オペレーションをやっていた某メーカのS川氏が登壇するということで話を聞いてきた。

帰り際に20分くらい質問させて頂き、再突入に関する疑問の大きな部分が氷塊した。

前にも書いたように、再突入を目撃した衝撃はいまだ続いており、"いったい自分はあのとき何を見てしまったのか"を検証する作業をコツコツ続けている。


なにより一番知りたいことは「どうやったら秒速12キロ、高度200キロで物体を落として狙った場所に落とせるのか」ということなので、まず片付けなければならないのは、はやぶさがどういう精度で地球に近づきカプセルを放出したのかということである。


仮りに1秒ズレたとすると落下地点も12キロズレる。放出角度のズレの影響はもっと大きいだろう。結果的に目標地点から1キロ以内に落ちたということで、いったどういう精度で誘導したのか、疑問をもって当たり前であろう。


今日伺ったところでは、「時間は1秒以内だけどそんなに高精度な誘導はしていない。放出角度も1度程度の精度。地球スイングバイのほうがよっぽど難しい」とのこと。

他にも、太陽輻射圧によるY軸制御の考案者でもあるS川氏に、基本的な質問をしたところ、丁寧に説明して頂くなど大収穫であった。


放出角度については、カプセル側の要求が5度以内だったらしく、それに対して1度以内の精度で放出できた模様*1。ということで、あの見事なカプセルの再突入ははやぶさの誘導制御技術よりは、カプセルを完全に設計通りに飛行させた超絶技術のなせる技だったらしい。


誘導に関しては"4σ"という単語が出てきた。
4σ = 0.9999367279 = 99.99367279%の確率で落下する範囲(長径200kmくらいの楕円だったか)を絞りこんだという話だが、実はこの4σの話は8月に偶然数分間だけ話を伺えたJAXAの山田氏(カプセル開発担当者)からも伺っていた。
そのときも再突入の位置や時間といった単体の精度より、角度を含めたいくつかのパラメータの合算した精度が問題だという話だったが、すぐに講演があるということでそれ以上詳しい話は聞けず、自分なりに勉強していた矢先であった。


カプセルの再突入に関してはいくつか論文も出ているので、こちらを勉強してみようと思う。


"関連blog"

*1:ちなみにはやぶさ本体のセンサは角度にして数10分の1度を楽に計測できる精度。打ち上げ後にカプセル表面から放出されたであろうガスの影響での揺らぎすら観測できたらしい。