ガザとイスラエルと

個人的な思い出と重ねて、今の想いを書く。

基本のキ

基本的な前提として「テロ行為と虐殺行為をおこなったハマスイスラエルは共に戦争犯罪者/国として国際司法の下で裁かれるべき」というスタンスを表明しておく*1

イスラエルの若者:1

20世紀、南米に住んでいた頃、Ronという名の一人の若いイスラエル人に出会った。彼は世界放浪中で気の弱そうな青年だった。 イスラエルが嫌で国を離れているようだった。イスラエルに戻るかブラジルにいくか幾度となく相談された。 数ヶ月の滞在の後、彼はブラジルに向かうと言って去っていた。彼がその後どうなったかは知らない。

イスラエルの若者:2

2001年頃、イスラエル企業と仕事をする機会があった。 数名の若いイスラエル人が来日したが、彼らはイスラエルへの移住者で、元々は南米人だった。彼らは改宗して家族を捨てイスラエルに移住したのだった。 南米で会った気の弱い青年とは違い、彼ら彼女らは野心に満ちた顔をしていた。

その頃、何度目かのイスラエルパレスチナの戦いがあった。まだネットが発達する前で、ニュースはTVを経由して得る時代だったが、 日本のメディアもその状況についてはっきりとイスラエルのやりすぎであるとの前提で報道がなされていた。

私は何気なく来日中のイスラエル人に、「ちょっと激し過ぎるね」とエレベーターを待つ間だったとおもうが、何の考えもなしに口走ってしまった。 もちろん今ならそういう話題は避けるべきであることは承知しているが、当時私は、他国で高い教育を受け育った人間がこれほど残虐な行為を無条件に肯定するとは思いもよらなかった。ナイーブすぎた。 そのときの彼女の顔は今でも思い浮かぶ。公共の場でできる最大限の怒りの表情を見せ、「そんなことはない」と言い放った。私は人間が一瞬で顔を真っ赤にできることをその時初めて知った。

彼らも中高年になっているが、昨年から続くネタニヤフ政権に対する反政府デモについてどのような態度を示しているのか、 今回のガザ攻撃を支持しているのかどうか、興味があるところである。

「奴らは動物だ」

1948年のイスラエル建国以降、イスラエルによるパレスチナの人たちへの攻撃は躊躇なく、 彼らを動物扱いし、殴りつけ、抵抗すれば射殺するなど、暴虐のかぎりを尽くしてきた。

2014 Protest Israel

この写真は今年のものではない。 2014年にも世界的に大規模なプロテストがあった。 このとき、イスラエルパレスチナへの膨大なミサイル攻撃を行ったが、イスラエル人は丘に椅子を並べて皆で見学していたのだ。 報道していたBBCのアナウンサーが流石にキレてそのイスラエル人たちに抗議していたのを覚えている。

www.theguardian.com

Israelis Watch Bombs Drop on Gaza From Front-Row Seats - The New York Times

ガザの祈り

一方、生まれながらに抑圧され続けたガザの子供たちは、311の犠牲者を弔ふ為、毎年凧を上げてくれているという。

jp.reuters.com

https://reliefweb.int/report/occupied-palestinian-territory/children-gaza-share-messages-hope-and-peace www.arabnews.jp

ジェノサイド

今回、ネタニヤフ政権はこういったパレスチナの子供だけでなく、 自国民の捕虜、100人を超える国連職員、ジャーナリストも関係なく無差別に爆撃して殺している。 病院も救急車も難民キャンプも爆撃されている。 プーチンですら躊躇する虐殺を続けているのが今のネタニヤフ政権である。

政権末期

ネタニヤフは一度政権を追われ、前回の総選挙で極右政党と手を組むことでかろうじて政権に返り咲いた。 国民の支持は明らかに低下しており、 さらに基本法の改正を巡り、国内で激しい反対デモが起きていた最中であった。

jp.reuters.com

戦争犯罪と文明

綺麗事だろうとなんだろうと、国際法に基づき、ネタニヤフは戦争犯罪者として裁かれなければならない。 欧米メディアではネタニヤフの戦争犯罪についての議論が始まっている。 ここでネタニヤフに逮捕状がでないと、プーチンとの対応でダブルスタンダードになってしまう。 これは国際的法秩序の崩壊であり、近代以前のやったもん勝ちの世界に戻ってしまう。

いや、中世ですら宣戦布告にはなんらかの言い訳があった。プーチンですら自分勝手な理屈をつけていた。 自らの正当化は、自身が権力を維持し続けるために必要不可欠なことだ。 これは家族という最小単位ですら成り立つ。社会性動物である人間の性のはずだ。

しかし今のイスラエルは虐殺を目的としていることを隠さない。これは近代国家としては前代未聞である。 まさにナチス以来のことをイスラエルがおこなっている。明確にエスニッククレンジングを目的とした虐殺を続けている。 ヒトラーが他国に隠しながら1939-1945年頃にやっていたことを、イスラエルは衆人環視の中で行っている。

2022年6月、プーチンが領土確保を目的にウクライナに侵攻した時、そしてブチャなどで拷問や虐殺を繰り返したことに衝撃を受けたのであれば、今回のイスラエルによるエスニッククレンジング(民族浄化)を目的としたガザ攻撃が何を意味するかよくわかるはずである。

ネタニヤフはプーチンの10倍以上凶悪な、おそらく裁ききれないほどの重罪を犯し続けている。 プーチン国際法下で戦争犯罪者であると思うのであれば、ネタニヤフも同様に戦争犯罪者として裁かれなければならないと考えなければならない。

そして、もしもネタニヤフが起訴も逮捕状もでないのであれば、それは国際法による国際秩序の崩壊、21世紀において数10万規模の民族浄化が正当化されるという文明の崩壊を目撃することに等しい。

もちろん、これまでも、そして今後も綺麗事100%の世界は不可能だ。だが、0か1かで割り切る話でもない。 問題は綺麗事、つまり悪は裁かれるという基本的なことが守られる、または守ろうとする社会を維持できるかどうかである。

今2014年を超える規模の世界的なデモが続いている。 人類がそのような各人の行動を可視化し、その思いを共有することは文明の維持に必須のことだ*2

*1:もちろん、プーチンも同様。

*2:日本ではデモはダサい、邪魔という非文明的で幼稚な意見が多いが、デモを禁止する国、デモが発生しない国がどんな国かちょっと考えれば良い。自国の環境を客観視できるか、鏡像認識の有無が知性の分かれ目である。