あるブログで「百発百中の砲台1台は、百発一中の砲台100台と、同等の戦力を持つ」と書かれたビジネス本があると紹介されていた。
書名も結論もないので、いったい何を言いたかったのかを検証してみる。
定義
百発百中の砲台1台をA軍、百発一中の砲台100台をB軍とする。A軍、B軍は行儀よく一度に1発だけ同時に砲撃するものとする。
砲撃による破壊の確率
第1回目の砲撃について。
A軍はB軍の1台を100%の確率で破壊する。よって第1回目の砲撃後に残っているB軍の砲台は99台。
B軍はA軍の1台を何%の確率で破壊するか?
答えは63.4%弱。(正確には63.3967658726771....%)
計算式は:
"砲撃される確率" = 1 - "砲撃されない確率"
= 1 - "1台目の砲台の弾が当たらない確率" * "2台目の砲台の弾が当たらない確率" * ... * "100台目の砲台の弾が当たらない確率"
= 1 - (1-1/100)^100
= 1 - (99/100)^100
= 0.633967658726771
第2回目の砲撃について、同様にB軍がA軍を破壊する確率を計算する。
A軍がB軍を破壊する確率はずっと100%なので省略する。
99台の砲台で攻撃するのだから、
1 - (99/100)^99 = 63.0270362350273... %
以下、
第3回目では
1 - (99/100)^98 = 62.6535719545731...%
第4回目では
1 - (99/100)^97 = 62.2763353076496...%
と、徐々に確率は低くなる。これは砲台が1台づつ破壊されるのだから当然である。
第100回目は1台しか残ってないので
1 - (99/100)^1 = 1.0%
つまり百発1中。
戦闘による破壊の確率
上で求めたのは、1回の砲撃でB軍がA軍の砲台を破壊する確率である。
A軍はこれらの波状攻撃にさらされているのだから、本当に
求めなければならない確率は「第N回目の攻撃までに破壊される確率」である。
1回目の計算式はトートロジー:
"第1回目の攻撃までに破壊される確率"
= 1 - "第1回目の攻撃までに破壊されない確率"
= 1 - (1 - "第1回目の攻撃で破壊される確率")
= 1 - (1 - 0.633967658726771)
= 0.633967658726771
2回目以降は
"第2回目の攻撃までに破壊される確率"
= 1 - "第1回目の攻撃で破壊されない確率" * "第2回目の攻撃で破壊されない確率"
= 1 - (1 - "第1回目の攻撃で破壊される確率") * (1 - "第2回目の攻撃で破壊される確率")
= 1 - (1 - 0.633967658726771) * (1 - 0.630270362350273)
= 0.864666995092968
"第3回目の攻撃までに破壊される確率"
= 1 - "第1回目の攻撃で破壊されない確率" * "第2回目の攻撃で破壊されない確率" * "第3回目の攻撃で破壊されない確率"
= 1 - (1 - "第1回目の攻撃で破壊される確率") * (1 - "第2回目の攻撃で破壊される確率") * (1 - "第3回目の攻撃で破壊される確率")
= 1 - (1 - 0.633967658726771) * (1 - 0.630270362350273) * (1 - 0.626535719545731)
= 0.949457956700681
などなど。
"第N回目の攻撃までに破壊される確率"
= 1 - "第1回目の攻撃で破壊されない確率" * .... * "第N回目の攻撃で破壊されない確率"
= 1 - (1 - "第1回目の攻撃で破壊される確率") * ....* (1 - "第N回目の攻撃で破壊される確率")
= 1 - Π (1 - "第n回目の攻撃で破壊される確率") ※ (1 ≦ n ≦ N)
ここで Π はπの大文字、各要素の積をとる。
以下、20回目の攻撃までの確率を示す。
攻撃回数 | 第n回目の攻撃でA軍が破壊される確率 | 第n回目の攻撃までにA軍が破壊される確率 |
---|---|---|
1 | 0.633967658726771 | 0.633967658726771 |
2 | 0.630270362350273 | 0.864666995092968 |
3 | 0.626535719545731 | 0.949457956700681 |
4 | 0.622763353076496 | 0.980933689057102 |
5 | 0.61895288189545 | 0.992734837162324 |
6 | 0.615103921106515 | 0.997203667311256 |
7 | 0.611216081925773 | 0.998912830821031 |
8 | 0.607288971642195 | 0.999573056673728 |
9 | 0.603322193577975 | 0.999830641057868 |
10 | 0.599315347048459 | 0.999932140471048 |
11 | 0.595268027321676 | 0.999972535078982 |
12 | 0.591179825577451 | 0.999988771786199 |
13 | 0.587050328866112 | 0.999995363312803 |
14 | 0.58287912006678 | 0.999998065940957 |
15 | 0.578665777845232 | 0.999999185114737 |
16 | 0.574409876611345 | 0.999999653192881 |
17 | 0.570110986476106 | 0.99999985091143 |
18 | 0.565768673208188 | 0.999999935261072 |
19 | 0.561382498190089 | 0.999999971604373 |
20 | 0.556952018373827 | 0.999999987419375 |
ということで、例えば10回の波状攻撃でB軍がA軍を撃破する可能性は99.993%。使う砲弾は1000-45=955発。どうみてもB軍の圧勝。
結論
結局、そのビジネス本とやらが言いたいことは推測できなかった。